カメラ選び

初心者向けカメラの「立ち位置」に関する一考察

 新機材を導入しました!写真右側の小さい方、初心者向け一眼レフカメラ、ニコンD5600です。
 なんで今さら入門機を買ったのかというと…。

 新型コロナがまだクルーズ船内の問題だった1~2月頃、初心者向けに一眼カメラ講座の講師をつとめました。
 だれでも簡単にスマホできれいな写真が撮れてしまうこの時代に、わざわざ大きくかさ張る一眼カメラを使うわけですから、そのメリットをしっかり楽しんでいただくために、各自のカメラを操作してもらいながら、フルオート以外の使い方についてアレコレかみ砕いてお話ししてきました。
 さすが、有料の、しかも全3回という本気モードのこの講座にご参加くださった9名の勇者たちです。欠席もなく、毎回質問の嵐で、本当に熱い時間でした。みなさんのこの先の成長がとても楽しみです。コロナ騒動がある程度落ち着いたら、次は撮影実習ツアーをご案内したいですね。

 で、この講座のなかで実際に参加者のカメラを操作しようとしたのですが…。アレ?使い方がワカラナイ!もちろん事前に各カメラの取扱説明書をダウンロードして目を通しておいたんですよ。
 でも、ISO感度とか、露出補正とか、ホワイトバランスとか、ちょっとヒネッた設定をしようとすると(っていうか、コレしないと写真にならない)、わからんのですよ。少し悩めばなんとかなるのですが、素早く反応できないのです(泣)。
 このあたり、自分的にすごく悔しくて、夏頃に再び同様の講座を計画しているので、ここはひとつ入門機をしっかり使い込んでおこう!と思いまして、現行モデルの中古品を探し出してポチりました(笑)。

 いつも仕事でメイン機として使っているカメラ、ニコンD5と並べて撮ってみたのがこの写真ですが、笑っちゃうくらい小さい!男性の握りこぶしをひと回り大きくしたくらいのサイズです(D5は弁当箱)。
 レンズを含めた重さは、左が約2,600gで、右が約700g。実にほぼ4分の1。
 値段は、具体的な数字は控えますが(知りたい人は調べてネ)、衝撃の…10分の1ナリ!←消費税かよ(爆)

 「店員に勧められた一眼レフ買ってみたけど、なかなかうまく撮れないから、結局スマホで撮った」って話、よく聞きません?
 こんな風に、初心者が入門機を買って挫折してしまう理由が、コイツをひと通り使ってみてはっきりわかりました。

  

【結論その1】
 入門機は、写真を「勉強」したい初心者が使うものではありません(キッパリ)!

 いわゆる入門機は、初心者に優しい顔をして近づくために、ボタンやダイヤルを極力減らし小さく軽く造られていて(=コストダウン)、ひたすらフルオートで撮ることを強要します。
 でも、フルオートでしか撮らないなら、スマホカメラのほうが絶対イイです。だって、失敗しないでしょ?ポケットに入るでしょ?そもそもいつも持ち歩いてるでしょ?

 でもやっぱりそれじゃ悔しいから、フルオート以外のモードでも撮影したくて、ちょっとカメラに詳しい人に教えてもらおうにも、中級機以上のカメラには絶対についているボタン類が無いから、質問されたその人も操作方法がわからず教えられない。しかも、400ページにも及ぶ詳しい取扱説明書は、PDFをダウンロードするか、メーカー直販の別売本を買うしかない(付属の説明書は驚愕の1枚ペラですよ、これが)。
 要するに、「安ければよい」というユーザーと、「売れればよい」というメーカーの思惑が一致したところに誕生した、極論すれば「上達を妨げる」カメラだったのです。
 だから、ここから写真に踏み込もうとすると、ほぼ確実に挫折します。そしてカメラはタンスの肥やしになります。

 本当に写真がうまくなりたい人は、入門機のまま私に弟子入りするか(笑)、覚悟して中級機(ボディ単体で15万円程度)以上のカメラを買いましょう!中級機以上のものなら、身近な経験者に質問すればきっと使い方を教えてもらえます。
 そしてなによりも、いろいろ試して変化のある写真が撮れるので、楽しすぎて写真沼にドップリはまることができます。

 とはいえ、私はこうした入門機の存在を否定しません。
 それどころか、「こんな素晴らしいものがあったなんて!」と、新たな発見にココロ躍っています。

 

【結論その2】
 メーカーは入門機として売っていますが、中~上級者のサブ機としてこそ圧倒的な存在価値があります!

 入門機とはいえ、カメラとしての機能はバッチリ備えているので、すでに所有している「良い(=高い)レンズ」を使い、ちゃんと考えて撮れば、得られる写真のクォリティはまぎれもない一級品。耐久性には疑問が残るけど、小さくて軽いし、何しろ安い。

 だから、まじめな話、私の撮影現場での「万、万が一」に備えた控え選手として、常時随行が確定しました。

 

[謝辞]
 こうして新しい気づきをくださったカメラ講座の参加者やスタッフのみなさまに、深く感謝いたします。
 また、このような長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

 

※注

 この投稿は、一眼レフカメラのグレードに関して論じたものであり、「一眼レフ」か「ミラーレス一眼」かを比較するものではありません。
 とはいえ、このグレード論は「ミラーレス一眼」においても同様であると考えます。

 ちなみに、これから写真を始めようとする方が「一眼レフ」と「ミラーレス一眼」のどちらを選ぶべきかについては、スポーツなどの動体撮影目的である場合を除き、「ミラーレス」をお勧めします。もちろん中級機以上のグレードです。
この辺りの話題は、また別の機会に。